「この記事の構成、A案もいいけどB案も捨てがたい。いや、C案の視点も入れるべきか……」 「クライアントへの返信、こう書くと失礼かな? でもあっちの言い回しだと誤解されるかも……」
こんなふうに、いろいろ考えすぎて結局いつまでも手が動かない、なんて経験はありませんか?
フリーランスやWeb担当者は、正解のない問題に向き合うことが日常茶飯事です。真面目な人ほど、あらゆる可能性を想定して悩み、脳のメモリを使い果たして疲れ切ってしまいますよね。
もしあなたが「考えすぎてパンクしそう」なら、「オッカムの剃刀(かみそり)」という思考ツールを使ってみてください。
これは14世紀から伝わる哲学用語ですが、現代の私たちにとっても「悩みの迷路から脱出し、最速で成果を出すための最強の武器」になります。
この記事では、難しそうな理論は抜きにして、今日からWebの仕事で使える「シンプルな思考法」としてオッカムの剃刀を紹介します。
この記事の結論
- オッカムの剃刀とは、「ある事象を説明する際、不必要に複雑な仮説を立てるべきではない」という指針のこと。
- Webの仕事においては、「迷ったら一番シンプルな方法を選ぶ」ことで、作業スピードと質が同時に上がる。
- ただし「単純化」と「思考停止」は別物。あくまで「まずはシンプルな仮説から検証する」姿勢が大切。
オッカムの剃刀とは?「説明不足なくらいシンプルがいい」
いきなり「剃刀(かみそり)」なんて物騒な名前ですが、これは物理的な刃物のことではありません。「余計なものを削ぎ落とす思考のナイフ」の比喩です。
オッカムの剃刀をひと言で説明すると、「同じ結論が出るなら、一番シンプルな説明や方法が、たぶん正解だ」という考え方です。
14世紀の哲学者が唱えた「ケチの原理」
元々は、14世紀の神学者・哲学者である「オッカムのウィリアム」という人が頻繁に使っていた言葉が由来とされています。
彼はラテン語でこう説きました。
「必要がないなら、多くのものを定立してはならない」
少し難しいですが、要するに「説明に必要な要素は少なければ少ないほどいい(ケチればケチるほどいい)」ということです。このことから、「思考節約の原理」や「ケチの原理」とも呼ばれます。
例えば、あなたの家の庭にある木が、朝起きたら倒れていたとしましょう。
- 複雑な仮説: 宇宙人が夜中に飛来して、実験のために木をなぎ倒し、痕跡を消して去っていった。
- シンプルな仮説: 昨晩、強い台風が来ていたので風で倒れた。
オッカムの剃刀に従えば、「証明できない宇宙人(余計な要素)」を持ち出す①よりも、事実だけで説明できる②を採用すべき、となります。
なぜ「シンプル」が最強なのか
もちろん、世の中には複雑な事情があることも事実です。しかし、ビジネスやWebの現場においては、複雑に考えすぎることが「行動しない理由」になってしまうケースが多々あります。
- 複雑な説明= 前提条件が多く、間違っている可能性が高い。検証に時間がかかる。
- シンプルな説明= 前提が少なく、事実に基づいている可能性が高い。すぐに検証できる。
「オッカムの剃刀」を持つということは、真実かどうか悩み続けるのをやめて、「まずは一番確率の高そうな、シンプルな手を選んで先に進もう」と決断することなのです。
カッパパWebライターの仕事で言うと、リサーチ中に「この情報は間違っているかも? 裏には陰謀があるかも?」と深読みしすぎて記事が書けなくなる……なんて沼にハマったことはありませんか?
そんな時こそオッカムの剃刀。「公的機関がこう発表しているなら、一旦それが事実として進めよう」と割り切る勇気が、僕らの仕事を前に進めてくれますよ。
フリーランスこそ「オッカムの剃刀」を持つべき3つのメリット
上司や同僚がおらず、すべての決断を自分で下さなければならないフリーランス。私たちこそ、思考をシンプルに保つことが生存戦略になります。
この思考法を取り入れるメリットは大きく3つあります。
1. 意思決定のスピードが上がり、時給が上がる
フリーランスにとって、迷っている時間は1円も生み出しません。 「A案とB案、どっちのツールがいいかな…」と数時間悩み続けるよりも、オッカムの剃刀で「機能がシンプルで使いやすいAでまずはスタート」と即決する。 そうやって浮いた時間を実作業に充てることで、結果的に時給単価を上げることができます。
2. 「妄想の不安」が消えてメンタルが安定する
「もし失敗したらどうしよう」「あのクライアント、実は私のことを悪く思っているのでは?」 こうした不安の9割は、事実に基づかない複雑な仮説(妄想)です。
オッカムの剃刀を使えば、「相手からクレームが来ていない=今は問題ない」とシンプルに事実だけを見ることができます。見えない敵と戦うのをやめれば、メンタルの消耗を大幅に防げます。
3. 「伝わる力」が劇的に向上する
提案書やチャットでも、あれこれと予防線を張った複雑な文章は、相手を混乱させるだけです。 「結論はこうです。理由は1つです」と言い切る勇気を持つこと。 シンプルなコミュニケーションは誤解を生まないため、修正の手戻りも減り、信頼獲得につながります。



僕も昔は「丁寧さ」を履き違えて、長文メールばかり送っていました。でも、オッカムの剃刀を意識して「要件のみを3行で送る」ように変えたら、返信スピードが倍になったんです。
相手も忙しい。だからこそ「シンプルさ」は相手への最大の配慮(優しさ)になるんですよね。
【実践編】Webの仕事で「複雑さ」を削ぎ落とす具体例
では、実際に明日からの業務でどう「剃刀」を使えばいいのか。Webライターやディレクターが遭遇しがちなシーン別に対策を紹介します。
1. ライティング・編集:修飾語を削ぎ落とす
文章を書いていると、つい「とても」「画期的な」「驚くべき」といった言葉を盛りたくなります。しかし、これらは事実をあいまいにし、読解のノイズになりがちです。
- ❌(複雑): 非常に画期的なこの最新ツールを使えば、誰でも驚くほど劇的に作業効率が改善される可能性が高いです。
- ⭕(シンプル): このツールを使えば、作業効率が改善します。
「なくても通じる言葉」は、すべて剃刀で切り落とす。事実だけを残すほうが、かえって文章の説得力は増します。これを意識するだけで、プロっぽい骨太な文章になりますよ。
2. トラブル対応:「相手は忙しいだけ」と仮定する
チャットの返信が遅いと、つい悪い想像をしてしまいますよね。
- 複雑な仮説: 「私のメールが失礼だった? 実は契約終了を考えている? 何か怒らせたかな?」
- シンプルな仮説: 「相手は今、猛烈に忙しい(あるいは忘れている)。」
オッカムの剃刀的に考えれば、ほとんどの場合は後者です。 「嫌われているかも」という複雑な要素を持ち出す必要はありません。「お忙しいところ恐縮です」と一言添えて、淡々とリマインドすればOK。無駄に病む時間をゼロにしましょう。
3. サイト運営:「多機能」を捨てる
ブログのデザインやプラグイン選びも同様です。「あれもこれも」と機能を追加すると、サイトが重くなり、管理も複雑化し、エラーの原因になります。
「読者が記事を読む」という最大の目的のために、その装飾や機能は本当に必要か? もしNoなら、勇気を持って削除(アンインストール)しましょう。シンプルなサイトは表示速度も速く、結果的にSEOでも有利に働きます。



ブログ初心者の頃、記事を書かずに「見出しのデザイン」ばかりいじっていた時期がありました…。 あれこそまさに、本質(記事執筆)から逃げるための「複雑化」でしたね。 稼ぎたいなら、デザインはシンプルにして、1文字でも多く書く。これに尽きます。
注意点:「単純化」と「思考停止」は違う
ここまで「シンプルにしろ」と言い続けてきましたが、ひとつだけ大事な注意点があります。 それは、「必要な要素まで切り捨ててはいけない」ということです。
アインシュタインはこう言ったとされています。
「物事はできるかぎりシンプルにすべきだ。しかし、シンプルすぎてもいけない」
オッカムの剃刀は、あくまで「迷ったときに、確率の高い仮説を選ぶ」ためのツールです。「面倒だから何も考えない」という思考停止とは違います。
- 良い単純化: 余計な仮説を捨てて行動し、間違っていたらすぐに修正する。
- 悪い単純化(思考停止): 重要なデータやリスクまで無視して、都合よく解釈する。
もし「シンプルな仮説」でうまくいかない事実が出てきたら、その時はじめて「少し複雑な仮説」を検討すればいいのです。最初から複雑に考える必要はありません。



「シンプル」は「手抜き」ではありません。 「これだけあれば十分機能する」という本質を見極めることこそ、プロの仕事と言えますね。
よくある質問(FAQ)
最後に、オッカムの剃刀についてよくある疑問にお答えします。
Q. オッカムの剃刀は日常生活でも使えますか?
A. はい、大いに役立ちます。 例えば「今日の夕飯は何にしよう」と悩んだ時。「栄養バランスも彩りも流行も…」と複雑に考えず、「冷蔵庫にあるものを使い切る」というシンプルなルールを採用すれば、即断即決できます。人間関係や買い物など、あらゆる選択のストレスを減らせます。
Q. 単純化しすぎると、深い考察ができなくなりませんか?
A. 逆です。ノイズが消えるので、本質的な考察に集中できます。 どうでもいい枝葉(複雑な要素)を剃刀で切り落とすことで、幹となる「本当に重要な問題」が見えてきます。思考のメモリを重要なことだけに使えるようになるため、考察の質はかえって深まります。
Q. 「ケチの原理」とは違うのですか?
A. 基本的には同じ意味です。 オッカムの剃刀は、説明に必要な仮定を節約することから「思考節約の原理」や「ケチの原理」とも呼ばれます。「仮説はケチればケチるほど良い」と覚えておきましょう。
Q. どんな時に使うのが一番効果的ですか?
A. 「情報がありすぎて動けない時」や「悪い妄想が止まらない時」です。 選択肢が多すぎて選べない時や、根拠のない不安で足がすくんだ時に、「一番シンプルな答えはどれ?」と自問することで、突破口が開けます。
まとめ:思考の「贅肉」を削ぎ落として、身軽に動こう
記事の要点をまとめます。
- オッカムの剃刀とは、物事を説明する際に「余計な仮定」を削ぎ落とす思考法。
- Webの仕事では「迷ったらシンプルな方」を選ぶことで、速度と質が上がる。
- 「思考停止」にならないよう注意しつつ、まずはシンプルな仮説から試してみる。
私たちは日々、膨大な情報とタスクに追われています。だからこそ、自分の頭の中くらいはシンプルに保っておきたいものです。
もし今、あなたが何かに迷って立ち止まっているなら、心の剃刀を取り出してみてください。 そして、「それって、もっとシンプルに考えられないかな?」と問いかけてみましょう。
驚くほど簡単に、答えが見つかるかもしれませんよ。
Next Step
まずは今日のToDoリストを見てみてください。「やらなきゃいけない気がするけど、実は成果に直結しないタスク」が1つはあるはずです。
それをオッカムの剃刀で「削除」することから始めてみませんか?
