仕事や副業で、ちゃんと準備したはずなのにミスが出たり、案件が炎上しそうで不安になったりしませんか?
そんなときに効くのが、逆転の思考法「インバージョン(inversion)」です。成功の方法を考える前に、失敗の作り方を先に洗い出して潰します。
この記事の要点(結論)
- インバージョンは、成功手順を増やすより先に、失敗条件を減らす思考法
- 1人でも使える型があり、チェックリスト化すると再現性が上がる
- 逆算思考と混同しがちなので、役割を分けてセットで使うのが強い
補足:ここでのインバージョンは思考法の話です。ヨガの逆立ち系ポーズや、数学・工学の「逆問題(inversion)」とは別物です。
インバージョンとは(逆転思考を一言で)
うまくいく方法を探す前に、うまくいかない条件を先に列挙して、回避策に変換する思考法です。
インバージョンの定義:成功ではなく失敗から逆向きに考える
インバージョンはシンプルに言うと、「これを成功させるには?」ではなく「これを確実に失敗させるには?」と問いを反転させるやり方です。
先に失敗要因を出すと、抜け漏れや盲点が見つかりやすくなります。
たとえば案件進行なら、
- どうすれば納期遅れが起きるか
- どうすれば修正が無限に増えるか
- どうすればクライアントの期待値がズレるか
みたいに、あえて最悪ルートを描きます。
なぜ効くのか:見落としやすいリスクを先に回収できる
多くの人は、前向きに考えるほど「やること(ToDo)」が増えがちです。
一方でインバージョンは「やらないこと(事故を起こす行動)」や「先に塞ぐべき穴」を見つけるのが得意です。
結果として、
- 重大な地雷を踏みにくくなる
- 判断が速くなる(迷いの原因が減る)
- 仕事の品質が安定する
という方向に効いてきます。
元ネタ:チャーリー・マンガーの「Invert, always invert」
投資家チャーリー・マンガーは、逆から考えることの重要性を「Invert, always invert(逆に考えよ、常に逆に)」という言い回しで語っています。日本語記事だとこの一文だけが独り歩きしがちですが、実務で使うなら「失敗条件の列挙 → 回避策へ変換」まで落とすのがポイントです。
まずはこれだけ:インバージョン最小チェック(30秒)
次の問いに答えるだけでも効果があります。
- 今やっていることを確実に失敗させる行動は何?
- 失敗のサイン(前兆)は何?いつ出る?
- それを起こさないために、今日1つだけ変えるなら何?
カッパパインバージョンは「怖がるため」じゃなくて「安心して前に進むため」の道具です。まずは10個出して、上位3つだけ潰す。これくらいの軽さがちょうどいいです。
逆算思考との違い
逆算思考はゴール達成の道筋を作る方法、インバージョンは失敗ルートを潰す方法です。目的が違うので、役割分担してセット運用すると強いです。
逆算思考:ゴールから道筋を引く(ToDoを増やす方向)
逆算思考は、達成したいゴールを決めて、そこから必要なステップを逆に並べていく考え方です。
たとえば編集案件なら、
- 納品日を決める
- 初稿締切、取材日、構成FIX日、素材回収日を逆算
- そこに必要な作業(リサーチ、構成、執筆、編集、校正)を積む
という感じで、やることを見える化して前に進むのが得意です。
インバージョン:失敗条件を外す(ToDoを減らす方向)
一方でインバージョンは、成功ルートを増やすより、失敗ルートを先に削るのが得意です。
たとえば同じ編集案件でも、
- 修正が増え続ける原因は何か(目的不明、レギュレーション未確認、想定読者ズレ)
- 納期が遅れる原因は何か(素材待ち、確認フロー不在、工数見積ミス)
- 事故が起きる前兆は何か(返信が遅い、決裁者が不明、要望が毎回変わる)
を先に出して、予防策に変換します。
使い分けの結論:両方セットが最強(おすすめの順番)
結論としては、次の順番が一番ラクです。
- インバージョンで、致命傷の地雷を先に避ける
- 逆算思考で、現実的なスケジュールと手順に落とす
- 最後にもう一回インバージョンで、抜け漏れを点検する
ミニ判断基準(迷ったらこれ)
- 何をすればいいか分からない → 逆算思考
- なんか事故りそうで不安 → インバージョン
- チームで揉めそう、炎上が怖い → まずインバージョン



僕は、インバージョンをやらずに逆算だけで突っ込むと、高確率で後半に爆発します。逆に、インバージョンだけで考えてると不安が増えて止まりがちです。なので、地雷回避してから前に進む、の順番がちょうどいいです。
インバージョンの基本手順(今日から使えるHowTo)
成功を考える前に、失敗させる方法を出し切って、上位だけを仕組みで潰し、チェックリストとして残します。
手順1:達成したい状態を1行で書く
最初にゴールを曖昧にしないのがコツです。ふわっとした目標だと、失敗要因もぼやけます。
書き方の例
- 記事を納期までに初稿提出し、修正1回で公開まで進める
- 今月中に新規案件を1件受注し、単価を下げずに契約する
手順2:それを確実に失敗させる方法を10個出す(雑でOK)
ここは質より量です。遠慮すると地雷が残ります。
失敗の出し方(例)
- 仕様確認をしない
- 依頼文のまま作業を始める
- 工数を見積もらずに受ける
- 決裁者を確認しない
- 返信が遅いのに放置する
手順3:失敗要因を分類する(整理して見える化)
出した10個を、次の軸で仕分けすると対策が作りやすいです。
分類の軸(どれでもOK)
- 行動:自分の動き方の問題
- 環境:ツール、時間、体力など
- 人:クライアント、チーム、家族
- お金:単価、追加対応、支払い条件
- 時間:締切、確認待ち、バッファ不足
手順4:上位3つだけ、潰す仕組みに変換する
全部潰そうとすると疲れて終わります。影響が大きい順に3つだけ選びます。
変換のコツ
- 失敗要因を、行動ルールに変える
- できれば、作業前に必ず発動する仕組みにする
例:潰す仕組みへの変換
- 仕様確認しない → 着手前チェックリストに仕様項目を固定で入れる
- 工数見積もりしない → 見積テンプレに工数欄を必須化する
- 決裁者不明 → 初回ヒアリングで決裁者と確認フローを聞く
手順5:チェックリスト化して、次回も使い回す
最後に、今日の学びを資産化します。インバージョンは1回限りだともったいないです。
チェックリスト例(案件開始前)
- 目的、ゴール、優先順位は確認したか
- 作業範囲と修正回数の前提は合意したか
- 納期と中間締切、確認担当者は決まっているか
- 懸念点が出たら、誰にいつ相談するか決めたか
1人でもチームでも使える最小版と完全版
最小版(5分)
- 失敗させる方法を5個出す
- 上位1個だけ仕組みで潰す
- チェック1行だけ追加する
完全版(20〜30分)
- 失敗させる方法を10〜20個出す
- 分類して、上位3個を仕組みで潰す
- 前兆と対処をセットで決める
- チェックリストにして次回も使う



最初は完璧にやらなくて大丈夫です。僕も忙しいときは最小版だけで回します。それでも、何もせずに突っ込むより事故率が一気に下がります。
仕事での具体例
インバージョンは抽象論より、案件の失敗パターンを先に潰す形にすると一気に実用になります。ここではよくある事故を、失敗の作り方→回避策に変換します。
例1:案件が炎上する(納期遅れ・修正地獄)を確実に起こす方法 → 回避策
失敗の作り方(インバージョン)
- ゴールと優先順位を曖昧なまま進める
- レギュレーションを確認せずに書き始める
- 中間提出を作らず、いきなり初稿で勝負する
- 確認フロー(誰がOK出すか)を決めない
回避策(潰す仕組み)
- 着手前に 目的・読者・NG・正解例 を1枚にまとめて合意する
- 構成案だけ先に出して、方向性を固めてから書く
- 中間締切を2つ作る(構成FIX日、初稿の半分提出日)
- 決裁者と確認手順(戻しは誰がまとめるか)を最初に確定する
炎上予防ミニチェック
- 依頼の意図を自分の言葉で言い換えて返したか
- 修正回数と追加要件の扱いは合意したか
- 途中で認識合わせするポイントを設計したか
例2:見積もりが赤字になる方法 → 回避策(ヒアリング・範囲・検収)
失敗の作り方(インバージョン)
- 工数を出さずに気合で受ける
- 作業範囲の線引きがない(どこまでやるか不明)
- 検収条件がなく、終わりが見えない
- 追加対応が出ても、都度無料で飲む
回避策(潰す仕組み)
- 見積テンプレに 工数・前提・除外 を必須で入れる
- 納品物を粒度高く書く(構成、原稿、画像手配、入稿、校正など)
- 追加対応は都度見積もり、もしくは月額枠で設計する
- 検収の定義(OKの条件)を文面に残す
赤字回避の一言テンプレ
- 今回の範囲はここまでです。追加は別途で対応します
- 修正は〇回まで、それ以上は追加工数になります
例3:継続案件が切れる方法 → 回避策(期待値調整・報連相・可視化)
失敗の作り方(インバージョン)
- 途中経過を出さず、納品日だけに現れる
- 不安や遅れを言い出せず、ギリギリで崩れる
- 相手が何を良いと思っているか確認しない
- 価値が見えない(何をどれだけ進めたかが伝わらない)
回避策(潰す仕組み)
- 定例の進捗報告を短文で固定化する(週1でもOK)
- リスクは早めに共有して、選択肢をセットで出す
- 先方の評価ポイントを聞く(スピード重視か、品質重視か)
- 成果を可視化する(作業ログ、改善点、次回提案)
継続が伸びる進捗報告の型
- 今週やったこと
- 次にやること
- いま詰まりそうな点(あれば)
- 判断が必要なこと(あれば)
例4:副業が続かない方法 → 回避策(時間・体力・家族合意)
失敗の作り方(インバージョン)
- 平日夜に重いタスクを詰め込み、疲れて崩壊する
- 予定を詰めすぎて、家族イベントと衝突する
- 単価が低いのに作業が重く、やる気が削れる
- 目標が曖昧で、やる理由が薄れていく
回避策(潰す仕組み)
- 週に2枠だけ固定で確保する(量より継続)
- 家族に 使う時間・終える条件 を先に共有する
- 低単価の重作業は切るか、型化して短縮する
- 目標を1行にする(例:月+3万円を3か月継続)
副業継続のチェック
- 続ける前提のスケジュールになっているか
- 体力が落ちる時間帯に重作業を置いていないか
- 断る基準があるか(単価、納期、相性など)



インバージョンが効くのは、失敗が再現性のあるパターンだからです。炎上も赤字も、だいたい同じ穴で転びます。自分の穴を3つだけ決めて、仕組みで塞ぐのが一番ラクです。
チームで回すならプレモーテムが相性抜群
インバージョンを会議の型に落とすならプレモーテムが便利です。責めずに対策をToDo化できます。
プレモーテムとは(インバージョンの会議版)
プレモーテムは「プロジェクトが失敗した未来を先に作って、原因を洗い出す進め方」です。
- ふつうのリスク洗い出し:失敗するかも、程度で終わりやすい
- プレモーテム:失敗した前提で考えるので、原因が具体化しやすい
進行テンプレ:60分でやる台本(責めないルール付き)
最初のルール(読み上げ)
- 人を責めない、仕組みを責める
- 今は原因出しの時間、解決はあとで
- 反論しない、まずは量を出す
アジェンダ(60分)
- 目的と成功条件の確認(5分)
- 前提の共有(スコープ、締切、体制、制約)(5分)
- 仮想失敗シナリオの宣言(2分)
- 失敗原因を各自で書き出し(個人)(10分)
- 共有して分類(20分)
- 上位3つを選んで対策を決める(15分)
- 決定事項の確認(担当・期限・トリガー)(3分)
出たリスクを「担当・期限・トリガー」まで落とすコツ
- 担当:誰がやるか(名前が入る)
- 期限:いつまでにやるか(日付かイベント基準)
- トリガー:何が起きたら発動するか(前兆の条件)
コピペ用:プレモーテム議事録テンプレ
- 今日の成功条件(1行)
- 失敗した未来(1行)
- 失敗原因リスト(分類つき)
- 上位3リスクと対策(担当・期限・トリガー)
- 次回の確認ポイント(いつ、何を見る)



個人で10分書き出してから共有する順番にすると、声の大きい人の意見に寄りにくくておすすめです
失敗しないための注意点(インバージョンの落とし穴)
やりすぎると不安が増えて止まるので、制限をかけて「前に進む道具」に戻します。
ネガティブ沼を避ける:制限時間と上位3つだけルール
おすすめの制限
- 書き出しは10分で打ち切る
- 対策するのは上位3つまで
- 対策は追加で頑張るより、仕組み化を優先
変えられないものを外す:コントロール可能に寄せる
変えられない要素(相手の性格、景気、社内事情など)に引っ張られると苦しくなります。
「自分が選べる行動」に変換しましょう。
変換例
- 相手の返信が遅い → 中間締切を早めに置く、リマインドの型を作る、並行タスクを用意する
- 先方が忙しい → 確認ポイントを減らし、Yes/Noや選択肢で確認しやすくする
反証とセットにする:思い込みチェック
- 挙げた失敗要因は、事実?それとも想像?
- 起きないケースは何が違った?
- 一番弱い前提はどれ?そこだけ検証するとしたら?
インバージョンが向かないとき(無理に使わない)
- 体力が落ちていて不安が増幅している
- 情報が足りず想像で膨らませてしまう
- 緊急対応中で考える時間がない
この場合は最小版(5分)だけにするか、逆算思考でタスクを切る方が早いです。



真面目な人ほど「全部対策しなきゃ」と思いがちです。10分だけ考えて上位3つだけ塞いで、さっさと作業に戻る。これが一番成果に直結します。
すぐ使えるテンプレ集(コピペ用)
この見出しの要旨:インバージョンは型として残すと再現性が上がります。1人用・案件用・チーム用をまとめます。
1人用:インバージョン・ワークシート(コピペ)
- 目的(1行):
- 成功条件(3つまで):
- これを確実に失敗させる方法(10個):
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10. - 分類(行動/環境/人/お金/時間):
- 影響が大きい上位3つ:
- ①
- ②
- ③
- 潰す仕組み(ルール化/チェック化/自動化):
- ①(仕組み):
- ②(仕組み):
- ③(仕組み):
- 失敗の前兆(トリガー):
- 今日やる最小アクション(1つ):
案件用:炎上予防チェックリスト(コピペ)
共通(案件開始前)
- 目的、読者、ゴールは言語化されているか
- 納品物(何を、どの形式で)は合意できているか
- 納期と中間締切(構成、初稿など)は決まっているか
- 修正回数、追加対応の扱いは合意できているか
- 連絡手段と返信目安、緊急時の連絡先は決まっているか
- 決裁者(最終OKの人)と、戻しの取りまとめ担当は誰か
編集・ライティング(着手前)
- レギュレーション(表記、トンマナ、禁止事項)を確認したか
- 想定読者の悩みと、記事の結論(主張)を1行で言えるか
- 構成案で見出しと流れを合意したか
ディレクション(体制・進行)
- 役割分担(誰が何をいつまでに)が明確か
- 確認フロー(レビュー順、期限、戻し方)は明確か
- リスク(素材遅れ、工数増、関係者増)の前兆は何か
- 前兆が出たときの打ち手(代替案)は用意したか
チーム用:プレモーテム議事録テンプレ(コピペ)
- プロジェクト名:
- 目的(1行):
- 成功条件(3つまで):
- 失敗した未来(1行):
- 失敗原因(分類):
- 仕様:
- コミュニケーション:
- 体制:
- 時間:
- 品質:
- お金:
- 上位3リスク:
1.
2.
3. - 対策(担当・期限・トリガー):
- リスク1:
- 対策:
- 担当:
- 期限:
- トリガー:
- リスク2:
- 対策:
- 担当:
- 期限:
- トリガー:
- リスク3:
- 対策:
- 担当:
- 期限:
- トリガー:
- リスク1:
- 次回確認日:
- その日に見る指標:



テンプレは次の案件で使い回したときに効きます。まずは共通チェックだけでも固定化すると、脳のメモリが空いてラクになります。
よくある質問(FAQ)
インバージョンとは何ですか?
成功の方法ではなく「どうすれば確実に失敗するか」を先に出して、失敗要因を回避策(仕組み)に変換する思考法です。
逆算思考とインバージョンはどう違いますか?
逆算思考はゴールから手順を作って「やること」を増やします。
インバージョンは失敗の作り方を列挙して「やらないこと」「塞ぐ穴」を見つけます。
おすすめは、インバージョンで地雷回避→逆算で手順化→最後に点検です。
インバージョンはネガティブ思考と同じですか?
同じではありません。不安を膨らませるのではなく、上位の失敗要因だけを潰して行動を前に進めるための道具です。制限時間と上位3つルールが効きます。
1人でも効果はありますか?チームだとどう回しますか?
1人でも効果があります。最小版(5分)で十分回せます。
チームはプレモーテム(失敗した前提で原因を出す会議)にすると、責めずに対策を決めやすいです。
どんな場面で使うと効果が出やすいですか?
- 失敗したときのダメージが大きい(炎上、信用低下、損失)
- 要件が曖昧で認識ズレが起きやすい
- 関係者が多く確認フローが複雑
- 初めての仕事で地雷が分からない
やりすぎるとどうなりますか?対策はありますか?
不安が増えて決められなくなったり、対策を盛り込みすぎて疲れます。
対策は、10分で打ち切る、上位3つまで、コントロール可能に変換する、です。
悩みはだいたい「考えすぎて止まる」か「勢いで突っ込んで爆発する」かの二択です。インバージョンは、その中間の落としどころを作れます。
まとめ
インバージョンは失敗条件を減らして、仕事の事故率を下げる思考法です。テンプレ化すると再現性が上がります。
- インバージョンは「どう成功するか」ではなく「どう失敗するか」を先に考える
- 上位の失敗要因だけを仕組みで潰して前に進むための道具
- 地雷回避(インバージョン)→手順化(逆算)→点検(インバージョン)の順が使いやすい
今日やるならこれ(最初の一歩)
- いま抱えている仕事を1つ選ぶ
- 「確実に失敗させる方法」を5個だけ書く(5分)
- そのうち1個だけ、チェック項目にして次回も使う



フリーランスって失敗のダメージが直撃します。気合より仕組み。インバージョンで地雷を避けておくと、成果もメンタルも安定します。
